アナロジー思考で発想力を豊かにしよう
以前『メタ思考トレーニング』で紹介した細谷功氏の著書に『アナロジー思考』という本がある。
ロジカルシンキングに関する著書で有名な著者だが、『アナロジー思考』はむしろそれとは逆で、発想力を豊かにするための思考法である。
では、本の内容について説明しよう。
アナロジーとは日本語で類推と訳され、類似している者から推し量るという意味である。
アナロジー思考とはアイデアを生み出すための思考法であるが、世の中に全く新しいアイデアは存在しないと述べている。例えば、Netflixは月額性の動画ストリーミングサービスだが、あれは新聞などのサブスクリプション型のビジネスモデルをアナロジーしたものである。
よって、アナロジー思考で大切なのは、「一見似ていない世界から借りてくる」ことであると筆者は述べている。
筆者はアナロジー施行の例として、かばんと予算管理の例を挙げている。
仕事の際、あなたが上司から「予算管理を現在の部署ごとからチームごとに変えようか検討しているが、チームごとの管理にした際のメリットとデメリットをまとめてきてくれ」と言われたとする。
今まで経理部にいたこともなく、数字にも強くないあなたがいきなりこれを頼まれたとする。
悩んでいる時、あなたは同僚とランチに行く。
そしてその同僚は最近かばんを買い替えたという。
そこで彼女は、「前のかばんに比べて中が小分けになっているから、几帳面ではない私でも中身がぐちゃぐちゃになることがなくなった」という。
そこであなたはひらめくのである。カバンが小分けになっているかも、予算管理を部署ごとにするのかチームごとにするのかも、「資源をどのように配分するか」という観点で見れば同じことではないか、と。
そう考えると、カバンを小分けのものにすることで得られるメリットは、予算管理をより細かいチーム単位で行うことで得られるメリットはよく似ているのではないかと考えられる。
例えば、普段からきちんと整理できる人はカバンの中身が小分けになっていなくても整頓されている。よって、小分けのかばんは普段きちんと整頓できない人に向いている。また、小分けになっていればどこに何があるかが一目瞭然になる。
これを予算管理に当てはめると、きめ細かい管理ができるマネージャーがいれば、部署ごとの管理でもうまくいくと考えられる。一方、マネージャーがあまり管理が得意ではない場合、チームごとの管理にして予算を細分化したほうが上手くいきやすいだろう。
そして、チームごとに予算が細分化されれば、チームごとに予算の使われ方が適切かどうか、ムダが発生していないかが発見しやすくなる。
一方、小分けにすることにデメリットもある。それは細分化することで柔軟性がなくなるということである。
例えば、小分けのかばんの場合、収納したいものとあてはまるスペースがない場合、使えない無駄なスペースが出てくるということである。チームごとに予算管理した場合、予算を使いきれないチームがあった場合ロスを生むことになる。
逆に、かばんの中に1つの大きいものを入れたい場合、小分けのかばんだと収納できない。予算管理に例えると、成長事業を担うチームが予想外の投資を必要とする場合、チームごとに予算が決められてしまうと身動きが取れなくなるということが発生するのである。
このように、予算管理というなじみがないものでも、かばんというなじみのある世界から「借りてくる」ことで、新しいアイデアが生まれ、思考の幅が広がる。
先ほど紹介したかばんと予算管理の例は「物事を細分化するかどうか」という視点でアナロジーを働かせることができる例であったが、これはクラウド上のファイルの整理などでも応用を聞かせることができる。
今はやりのシェアリングエコノミーなども、今や車や家、時間や労働力など、様々なアイデアが生まれているが、それも「一見遠くに見える世界から借りている」アナロジー思考に基づくものだといえる。
具体的なものを「これは要するに、、」という風に抽象化する癖をつけておき、自分の引き出しを持っておけばいざというときにアイデアを出すヒントとなる。
まだ読んでない人にはぜひ読んでみてほしい一冊である。