『なぜ投資のプロはサルに負けるのか』を読んだ感想

藤沢数希氏の著書『なぜ投資のプロはサルに負けるのか』の概要と読んで思ったことを紹介する。

 

この本は、いわゆる「投資で誰でもお金持ちになれる!」という類の本ではない。

 

本書では投資のプロとして活躍していた著者が、資本主義を勝ち抜くためのシンプルなルールを紹介している。

 

 彼は、お金持ちになるためのステップをフローチャートで示している。

 

以下の3つの項目をクリアすればお金持ちに近づけるという。

  • ギャンブルが好きか
  • 借金があるか
  • 数百万の自由に使えるお金があるか

 

一つひとつ見ていこう。

 

まず1問目は「ギャンブルは好きですか?」という質問だ。

もし答えがYesなら、今すぐに辞めるべき、ギャンブルにはまっているうちはお金持ちになれないと筆者は主張している。

 

彼はその根拠を、数学的な理論に基づいて競馬や宝くじの例に例えて説明している。

 

例えば、競馬の場合、還元率は75%に設定されているため、100円賭けたら平均的には75円返ってくる計算になる。馬券さえ買ってもらえれば胴元のJRAは25%のテラ銭を獲得できる。

 

もし、100人の参加者が1万円ずつを第1レースに全額賭けるとする。その場合、掛け金の総額75万円を100人で取り合うことになる。50人が勝利した場合、勝った50人は15,000円を受け取り、負けた50人は掛け金が0円になる。

 

次に、残った50人が所持金の15,000円を第2レースに全額賭けるとする。75万円のうち25%の187,500円がJRAに取られ、75%の562,500円を50人で取り合う。半数の25人が勝利すると、勝利した25人は22,500円を受け取り、負けた25人は所持金が0になる。

 

このやり取りを1日のレース数である12レース続けた場合、参加者のもとにはいくら残るだろうか。

 

答えはなんと、31,700円である。

 

100万円あった参加者の掛け金の97%は胴元に取られ、勝ち続けた参加者の手元には元本の3%しか残らないのだ。

 

宝くじの場合は還元率が40~50%と競馬より悪い。また、生命保険もギャンブルと同じ原理であると筆者は言う。人が死んだときに当選するという「慰め」の意味合いが強いが、実際に還元率は宝くじや競馬とさほど変わらないだろう。

 

公営ギャンブル以外の賭博が禁じられているのは、こんな美味しいビジネスを民間に簡単に渡すわけにはいかないからだ。

 

ギャンブルでお金持ちになった人がいないように、参加者が確立的に負けるシステムのため、現在パチンコや競馬にはまっている人はそこから抜け出すことがファーストステップである。

 

生命保険に入るなとは言わないが、過剰な補償のついたものは必要ない。

 

 

2つ目の質問は「現在借金がありますか?」である。

 

もしYesなら、資産運用云々の前に真っ先に借金を完済することが大切である。

 

筆者はその根拠として、DCFモデルを使って現在と未来のお金の価値について説明している。

 

DCFモデルとは、ディスカウンテッドキャッシュフローモデルの略で、現在と未来のお金の価値を計算する方法である。

 

簡単に言えば、1年後の100万円より今この瞬間の100万円のほうが価値が高いということである。

 

例を使って説明してみる。もしあなたが消費者金融から100万円借りたとする。1年後に返すとすると、金利が10%かかったとして110万円にして返す必要がある。ようは、現在の100万円と1年後の110万円の価値が同じであるといえる。

 

現在の100万円=未来の110万円という式が成り立つとすると、1円当たりの価値は現在のほうが大きいことがわかる。

 

だから、借金を持っていると金利がどんどん膨れ上がっていき、お金の価値が下がってしまう。だから、現在借金がある場合は、一刻も早く返済することから始めなければならないのだ。

 

最後の質問が「数百万の自由に使えるお金がありますか?」という質問である。

 

株式投資は年間利回りが大体5%といわれており、言うまでもないが資金が潤沢であればあるほど有利になるゲームである。よって、例えば10万円投資しても1年で5,000円しか増えない。

 

株式投資の利回りだけで生きていくには最低でも1億円ほど必要だが、とりあえず500万円あれば25万円ほど増えるので、数百万の余裕がない人はまずは働いて資金をためることを優先すべきである。

 

そして、ギャンブルが嫌いで、借金もなく、数百万の自由に使えるお金がある人には、長期の国際分散投資を勧めている。日本国債、外国債日本株、外国株にインデックスファンドを利用して時価総額の比率で購入すれば、リスクを分散してリターンを期待することができる。

 

 

インデックスファンドは市場そのものに投資できる金融商品である。例えば、TOPIXインデックスファンドを買えば、日本の株式市場そのものに投資できることになる。

 

このように、インデックスファンドを買うべき理由がある。それは、株式投資そのものがコイン投げのように運要素が強く、銘柄を絞って投資するとギャンブルに近くなってしまうからだ。

 

株式市場では、一日中チャートに張り付いて割安商品を血眼になって探しているトレーダーたちで成り立っている。彼らの間で株式の売買が行われるとき、一方はそれを値上がりすると思って買い、もう一方はそれを値下がりすると思って売る。よって、しばらく時間がたてばどちらがバカだったかがはっきりするのだが、素人であっても二分の一の確率で勝利することができる。

 

だから、できるだけ多くの国や銘柄に分散投資したほうが安定的なリターンを見込めるのだ。

 

このフローチャートを実践し、経済合理的に行動すれば、誰でもお金持ちに近づくことができる。しかし、もしこの考えを国民全員が理解し実行したらどうなるだろうか?

 

誰もギャンブルをしなくなったらJRAはつぶれ、国は財源を確保できなくなる。また、人々の余計な出費がなくなることでモノが売れなくなり、日本経済は停滞するだろう。

 

このように、個人個人ではそれが正しい行動でも、それが大多数になると必ずしも正しい結果にならないことを経済学用語で「合成の誤謬」と呼ぶ。

 

これはとても面白いパラドックスだと思った。それでも人々は欲求に逆らえないから、このようなことは起こりえないのである。

 

 

私は今日も淡々と合理的に行動している。みなさんも浪費していたらほどほどにして、お金持ちに一歩近づこう。